MERIDA工場

メリダってすごいメーカーだということを今回はしっかり洗脳されて帰ってきました・・・もちろんいい意味でですよ。
これは2年ほど前にアメリカに行った時と同じ感覚です。

現在スポーツバイクの生産はほとんどが台湾メーカーの手によるものであることは、少しでもスポーツバイクに乗っている方であればご存知の事だと思います。
欧米のほとんどのメーカーさんは製造メーカーでは無く、開発者集団といってもいいと思います。
どんなにいい開発をしてもそれを形にする、または開発者の意図を形に出来るかどうかは実際に生産する工場の質の問題でもあるんですよね。

MERIDAの工場は、トヨタの生産システムを導入し無駄を極力省いて、作業効率を高めるために20という少ロットで部品が管理されていました(今後はこれを15まで減らしていくということです)。多品種の製品を少ロットで無駄無く、効率良く生産するための手段であって、無駄無くというのは不良や超過在庫を極力減らすことにもつながります。

最初に書いておきますが今回見学した台湾彰化県員林にある工場だけで年間95万台ほどが生産されていますが、その生産工程のほぼ全てが手作業ということに驚きました、正直低価格のモデルは全自動でポコポコ出来上がってくるのではと思っていましたが、そういうわけではないんです。もちろんCNC加工機械や全自動溶接機なども導入されていますが、それはどうしても人の手では加工できない個所に限定されていますし、そこに部材をセット、調整するのは結局人の手であり、眼でもありますしね。

まず見せてもらったのが溶接前のパイプの最終的な加工、パイプとパイプの接合面の処理などを1本1本行い、20個単位で管理していきます。これは余分を作らず、万が一不良が出た時の管理のためでもあります。
これは最終の梱包まで一貫して管理されています。
この20個の部品が入ったケースが次の工程である溶接ブースに持ち込まれ、職人が1本1本手早くでも確実に処理していきます。ここではU字型に区切られたスペースで一人の職人が複数の機械を使いながら作業を進めていました。

各工程の通路脇には看板が設置されていて今現在の作業状況が記されていたり、お手本(見本)となる技能上位者の作成したフレームがおかれて出来上がった製品のチェックにも使われているようですし、それぞれ担当ごとに技能上位者の名前がランキングされていました。

ココで出来上がったフレームがやはり20本単位でハンガーに掛けられて次の出番を待っていました。

次に見たのが塗装工程。
メリダが一番こだわっている場所でもあり、他の工場を見た経験のある方に聞いても他社では考えられない設備だそうです。他では工場内の一角で特に他所と区切られれる事も無く外気が吹き込むところで行われることも珍しくない上、塗装前のフレーム洗浄などに使われる水も通常の水道水だったりするそうです(日本で水道水と言えばそのまま飲めるのは当然で綺麗に殺菌もされていますが、諸外国に行くと蛇口ひねったら茶色い水が出てくるというのはよくあること・・・これがどういうことかはわかりますよね)。
メリダで使用している水は工場内に独自で設置している処理装置で作られる純水を使用しています。
食品を扱うのでもなかなか無いんではないですかね・・・
当然塗装エリアは完全隔離、ブースを見学するにはまず1つ目の扉を通った後履いている靴にカバーをかけてから次の扉の奥に通され、その中にある塗装ブースはまた別の箱として設置されています。
この塗装エリアは完全に外気から遮断され内部循環された空気で空調管理がされています。
塗装ブースの中にはフックに下げられたフレームがゆっくり移動してしていくのですが、職人が1本1本スプレーガンで塗装していきます。更に通常であればブース内に塗料があちこち飛び散って残ってしまうのでしょうが、ここでは天井から壁伝いに水が常時流されてブース内が常にクリーンな状態を保つように空調とともに管理されていました。
これだけ厳重に管理されているおかげか、よくある塗装現場の気持ち良くなってしまうような塗料の匂いも全然気になりませんでした。

デカールを貼る部屋も別になっていてここでも流れてくるフレームに手際良く確実に貼り付けられていました。

次はフレームが自転車になっていく工程。
自転車はお店に届けられる時には7割型組み立てられた状態(7分組といいうます)で箱に梱包されてきます。
治具に逆さまに固定されたフレームにBB、クランク、ヘッドセットにフロントフォーク、ボトル台座のボルトやディレーラー、チェーン、ブレーキなどなどが流れるように取り付けられ、緩衝材が必要個所に巻かれてできあがり。
素早く箱詰めされて出荷場所へ・・・と思ったら、
最初に書いた20というロットがここでも生きていて、せっかく箱詰めした完成品を20台に1台抜き取ってその場で組立て、最終の製品チェックを行っていました(もちろんここで不備が出た場合には20個全てがはじかれ検査されるそうですし、OKであればこの検査品ももう一度梱包されます)。

最初のパイプの加工から箱詰めまでで1台にかかる時間はなんと68時間(工場の稼働時間で言えば7日間)。
組立てには気を使っているつもりでしたが、今後は箱を開けるのにも気を使いたいと思います(笑。

ココまで徹底的に管理された生産システムから産み出される自転車が悪いものであるわけが無いですよね。
工場内のことって今までは私も当然見たことが無かったですし、社外秘な部分も多く(写真撮影がダメなことも当然それに起因していますが)、OEMが当たり前の現在では製造メーカーであってもなかなかその内部を見せていただく機会はありません、他社ブランドの製品も多く製造していますからね。

実際この工場内ではメリダ以外にも喜輪の扱っているブランド2つが多く生産されています。
一般のユーザーさんでも知っている方は多いとは思いますがあえて書きません・・・この日も沢山そのメーカーのフレームも見てきましたしw(まぁ1つは喜輪のブログでよく出てくるメーカーです)。

メリダは台湾の企業ですが、開発チームはドイツにあります。
ドイツではR&Dセンターで常に研究開発を繰り返しながらも過去6回世界チャンピオンを輩出した世界一のMTBチーム、マルチバン・メリダというMTBチームを抱えています。当然このチームからの情報も開発に生かされているわけです。ツールドフランスなどへ出場しているチームへの供給はまだされていませんがロードバイクもいい物が出てきていますし今後はそういう展開も考えられるそうです。
そこで出来上がった図面を形に変えているのが今回の工場です。

他の2ブランドに関しても開発している人や場所は違えど同じ工場で同じ設備、技術、システムから製品が生み出されていることを肌で感じることができたので今後も安心して皆さんにお勧めできると自信を深めて帰ってきました。
価格と製品の質、スペックがバランス良く、グラフィックもかっこいいと思います、次のバイクの候補にいかがですか?

しっかり開発者や作り手のこだわりが見えてくるものというのは販売する側としても力が入りますねw。

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